ゼロは、私を連れて、ある洋服屋の前で立ち止まった。
「ここにするか。好きなの選んでいいぞ。」
私はゼロの後ろに続いて店に入る。
「わぁ………。」
店内はオレンジ色の光に包まれていて、キラキラした真新しい洋服が、所狭しと並んでいる。
私はとてもわくわくしてきた。
今まで、普通の女の子とは無縁の生活を送ってきたので
洋服など、選んだことがない。
私が落ち着かないのを見ると、ゼロが飾ってある服を何着か手に取り始めた。
「これなんか、フィオネに合うんじゃないか?」
ゼロが見せたのは、シンプルな白いワンピースに、ピンクの刺繍が入った可愛らしいものだった。
「こんなの着たことないわ。」
少し恥ずかしくなってゼロの方を見た。
似合うって言われても。
ゼロの中で、私はこんなイメージなんだろうか。
「大丈夫だよ。これは俺からフィオネへのプレゼントな。」
そう言うと、ゼロはワンピースを持って私を試着室へと連れて行った。
袖に腕を通すと、今まで感じたことのない感情が込み上げてくる。
鏡に映る自分が、自分だとはどうしても思えなかった。
「ありがとう。ゼロ!」
私は試着した服をゼロに見せる。
「いいじゃん。ジェノバさんも可愛いって言うと思う。」
ゼロのその言葉を聞くと、ふいに涙が出そうになった。
「……ありがとう。気を使ってくれて。」
「別に、本当にそう思っただけ。
…買ってくる。」
ゼロはそう言うと、レジの方へ歩いて行った。
やっぱり私はゼロの相棒になれてよかった。
ジェノバだって、そう思ってくれてるよね?



