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少し歩くと、ゼロは私の方を向いて言った。
「やっぱりお前を一人にしちゃダメだな。フィオネは人を惹きつける。
奴隷屋にでも目をつけられたらタチ悪い。」
ゼロの言葉の意味がわからず、私は尋ねる。
「なんで私が絡まれるの?」
きょとん、とした顔で彼を見つめると、ゼロは、はぁ、と息を吐いて言った。
「自覚がないのかもしれないけど、お前の容姿は人を惹きつけるんだよ。
この町に入った時から、いろんな奴が振り返って見てたじゃねぇか。」
私が場違いだから見られてるんだとばかり思っていた。
銀色の髪の毛にエメラルドのような碧色の大きな瞳。
華奢で長い手足は見るものを魅了した。
「まぁ、俺が隣にいる分には、声をかけてくる奴もいないだろうし。
フィオネにも新しい服を買わなきゃな。」
「えっ!…買ってくれるの?」
「当たり前だろう?フィオネは俺の相棒なんだから。」
ゼロの言葉に私は嬉しくなる。
新しい服を買うなんて、ここ数年なかったことだ。
それに……
“相棒”ってなんていい響きなんだろう。
私は少しくすぐったくなった。
ゼロは、相棒になれば後悔する、と言っていたが
私はそうは思わなかった。
私の世界を変えてくれたゼロに
ずっと付いて行こうと決めた。
この先、何があったとしても…。



