「じゃあ、買ってくるから店の前で待ってて。」
ゼロはそう言うと、さっさと商店に入って行く。
私は商店の壁に寄りかかって、空を見た。
町の空は、夕焼けで赤く染まっている。
闇町にいた頃は、空を見上げて
綺麗だ、と
思ったことがあっただろうか。
今日を生きるのに必死で、そんな心の余裕なんてなかったように思える。
私は、ゼロに会ってから変わったのかな。
****
「君、一人?」
ぼんやりと空を見上げていると、
急に一人の青年に声をかけられた。
町で人に声をかけられるなんて初めてだったので、どうすればいいのかわからなかった。
「もうすぐ日が暮れる。今夜泊まる宿は決めてあるの?」
私が返答に困っていると、青年はどんどん質問をしてくる。
「見ない顔だけど、旅の人?どこから来たの?」
ど、どうしよう。
ゼロもいないし。
私は思い切って口を開く。
「あの…!」
するとその時、急に後ろから肩を引かれた。
「こいつ、俺の連れなんだけど。」
ぱっ、と振り返ると、怖い顔をしたゼロが立っている。
「フィオネ、何絡まれてんの?行くぞ」
ゼロはそう言うと、スタスタと私の手を引いて、その場から立ち去ってしまった。



