ジェノバはゆっくりと椅子に座り少し黙ると、私の方を向いた。


何かためらっているような仕草を見せる。


最近、ジェノバは私に、何かを言いかけてやめる、といったようなことが増えた。



「ジェノバ…何か欲しいものでもあるの?


できることなら、町から盗ってくるわ。」




私がそう言うと、ジェノバは決心したように口を開いた。




「フィオネ…もうこんな生活はやめよう。お前だけなら他の町に出れる。


もっと都市に近づけばまともな仕事もあるだろう。」




私は、その言葉にハッとする。




深刻な顔をしてジェノバは私をじっと見つめた。




「何言ってるのジェノバ!

親をなくした私を拾って育ててくれたのはジェノバでしょう?


私はどこへも行かないわ!ずっと一緒にいる。」




私は五歳の時、賊となった魔法使いに襲われて両親を殺され、一人ぼっちになった。



食べるものも尽きて、町をあてもなくさまよい歩き、意識を失った時があった。