へぇ…そういう生き物がいるんだ。
闇町は魔法使いのいない町だったから、そもそも魔獣が引き寄せられずにいたんだな。
人生で一度も本物を見たことはない。
「野生の魔獣は気性が荒い。
それに、一度魔力を感じたら、何頭も一気に集まりだすんだ。」
囲まれたら命の終わりだな。
ゼロは周りを見渡しながら言う。
「ちなみに、腹が減ってる時は魔力のない普通の人間も襲うからな。」
私はゼロの言葉にどきっ、とした。
ゼロは大きさは様々だ、と言ったけど
あの爪痕を見る限り、ここに生息している魔獣は相当大きいサイズのようだ。
「ゼロは闇町に来る時も、この森を通ったの?」
私の言葉に、ゼロは頷く。
「この森は一日では抜けられないからな。野宿をしながら進むんだ。」
「え!寝ている間に襲われたらどうするの?」
私は驚いて尋ねる。
野宿中にテントを魔獣に囲まれでもしたら一巻の終わりだ。
そんな私に、ゼロは少し笑う。
「テントの周りには魔獣避けの結界の魔法をかけるから大丈夫だよ。
それをかければ、奴らには気づかれることはない。」
そんなことできるんだ。
ゼロはやっぱりすごい腕の魔法使いなのかもしれない。
普通の魔法使いもこれぐらいはできるのかな。



