「ゼロ…。私、ゼロにお願いがあるの。」
私がそう言うと彼はすぐに返事を返した。
「もう魔法はかけたぜ?町の時は止まったままだ。
心配しなくても魔法は解けねぇよ。」
町が生きかえって、辛い記憶が蘇ることはない。
そう、ゼロは言った。
私は、ある決意を胸に、彼を見つめたまま口を開く。
「違うの。……ゼロ………。
この町を出るんでしょう?」
私は彼の背中を見ながら言う。
少年はこの後の私の言葉をわかっているんだろう。
こちらを向こうとしない。
私は、ぐっと手を握って
まっすぐ彼を見た。
「私、“孤独”になってしまったの。
ゼロ………
あなたと旅をする条件は、何?」
ゼロは少し黙って、答える。
「別れを悲しむものが、いないこと。」
それを聞いて、私はゼロの背中に向かって叫んだ。
「ゼロ!!私を連れてって!!」