ゼロは、私を見た瞬間、石のように固まった。
私は部屋の中に入って扉を閉める。
「なんで……………。」
ゼロが私の顔を見ながら言った。
その先の言葉は聞かなくてもわかる。
「ゼロと離れるわけないでしょう?
私は、ゼロの“相棒”なんだから。」
私の言葉に、ゼロは明らかに動揺している。余裕のないゼロを見るのは貴重だ。
ゼロは、私の言葉に続ける。
「なんで逃げなかったんだよ……。…死ぬかもしれないのに。
俺は、フィオネを利用しようとしてたんだぞ?」
「ゼロのことなんか、だいっ嫌い。」
私の言葉に、ゼロは私にもわかるぐらい、ショックを受けている。
その顔からは悲しみの色がうかがえる。
「………と、思ったけど、嫌いにはなりきれなかったわ。」
「え?」と、ゼロは目を見開いて私を見る
「やっぱり、出て行こうかとも思って、街を歩いてたんだけど、これ。」
私は持っていた紙袋をゼロに見せた。
中には、ゼロの好きなココアの粉がはいっている。
「これを見た瞬間、町を出れなくなっちゃった。
………馬鹿よね。ほんと。」