俺は、ドロシーが笑ったところは初めて見たので、少し驚いた。
その笑顔は、口調とは裏腹に、普通の女の子そのものだった。
ジンが会いに来る気持ちも分かるな…。
そんなことまで思ってしまう。
「……あぁ。伝えとく。」
俺はそう言うと、ドロシーの部屋を出て、扉を閉めた。
“フィオネさんにもよろしく”…か。
本当に、フィオネに伝えられるかどうかは保証出来ないな。
「ふぅ………。」
無意識にため息が出た。
塔の壁に寄り掛かる。
「フィオネ………」
その先は、口には出来なかった。
行かないでくれ、と言える立場でもない。
あんな辛い現実を、受け止めきれるはずはない。
まぁ、フィオネにとって、俺の存在がそこまで大きくなかったとしたら、傷は浅いのかもしれないけどな……。
少なくとも、俺は一生忘れることはないだろう。
俺は、重い足取りのまま、塔の階段を降りていった。



