小さな背中を見送ると、
ゼロは私の方を向いて言った。




「それじゃあ、町に入るか。
…宿を探さなくちゃな。」




辺りはもう真っ暗で、時計は十時を回っていた。





私はゼロの後に続いて、丸太でできた町の門をくぐる。





すると、そこはソリに乗って上空から見た時よりも、さらに幻想的な町並みが広がっていた。




レンガ造りの建物に、あちこちに星の形をしたランプがついている。





素敵な町だな…。




ふと、前方を見ると、高い塔がそびえ立っているのが目に入った。





「ゼロ、あの塔は何?」





私はゼロに尋ねる。





「あれは“月の塔”だよ。

この町はもともと最果ての丘の魔獣を見張るための町でな。あの塔に登れば最果ての丘も見えるぞ。」







“最果ての丘が見える。”






その言葉を聞いて、私は胸が高鳴った。





私たちの旅の終着点が見えるんだ。
…見てみたいな…。






ゼロは、私の心中を察したのか、塔を見上げながら言った。






「今日はもう暗いから塔からは何も見えないと思うけど、明日の朝になれば丘全体を見渡せるだろうな。


…登ってみるか?」






私は、ゼロの言葉にぶんぶん、と
首を縦に振った。