ゼロは、黙って、少し考えていたが
ふぅ、と息を吐いて言った。




「今回は黙って厚意を受けるか。乗ろう、フィオネ。

今日の夜に着けるなら、大幅に体力も食料も節約できる。」




確かに、国の中心から東の果てまで歩こうとしていたんだもんね。



今日のうちに着けるなんて、考えられなかった。




エドウィンは私たちをソリに乗せると、
使い魔のドラゴンたちの手綱をぐっと引っ張った。




「さぁ、出発いたしますぞ!
しっかりつかまっていてくださいませ。」




私たちは、エドウィンの掛け声とともに、ふわり、と、宙に浮き上がった。





都市の町並みがだんだん小さくなっていく




「見て、ゼロ。森の方!」




私は都市の中に広がる、森を指差した。




そこには、七色の光がまっすぐに空に伸びている。





「グランの魔力だ。……別れの挨拶ってことか?」





ゼロが光を見ながら呟いた。




グラン……。



また会えるよね?






この町で出会ったたくさんの優しい人たちのことを、私はたぶん、一生忘れない。




「願いの町まではたっぷり時間がありますからね。

この国の空からの景色を存分に楽しんで参りましょうか。」





エドウィンは、そう言うと、
大きく旋回して、東の空へとソリを走らせた。





都市の上空には、どこからか風に乗ってやってきたピンクの花びらがひらひらと舞い上がっていた。








*第3章・完*