私は、ゼロの方を見て言う。



「……ダリシーンのこと、憎んでたんじゃないの?」



ゼロは、少し視線を落として
私に答える。




「…確かに、ガキの頃から憎んでいたよ。本当に、殺してやろうと思ってた。」




そこで、ゼロは少しの沈黙のあと、
「けど、」と続ける。




「フィオネに会って、都市に戻ってきて、奴の治める国を見て…。

………思ったんだよ。
もう復讐に生きるのはやめようって。」






ゼロは静かにそう言った。





「奴のことは大嫌いだけどな。」と付け足したゼロだったが、その顔は、どこか爽やかだった。





私は、彼から目をそらして、部屋の外を眺めた。





都市には、明るい陽の光が優しく降り注いでいる。






そっか……。






よかった…。






私は、ふぅ、と小さく息を吐く。



ゼロが、やっと暗闇から出てきてくれたような気がした。





すると、ゼロが私の隣に立って歩きだす。




「フィオネ。寄りたいところがあるんだ。
一緒に来てくれるな?」




そう言って、ゼロは私の返事をわかっているかのように、ふっ、と笑うと




がちゃ、と、扉を開けて部屋を出た。