ゼロは、グランの方を振り向くこともなく、私の手を掴んで樹海へと走り出した。
グランとの別れを惜しむ暇もなく私は必死に足を動かす。
「フィオネ!また来い!
お前なら……魔力にも……きっと……。」
背中の方から、グランの声が聞こえた。
走る音で、遠ざかる声がよく聞こえない。
優しくて、厳しい。
それでいて、ジェノバのような温かさを持った、私たちの理解者。
グラン……また会えるよね…?
私は、ゼロの手を強く握った。
私の心を察してか、ゼロも強く握り返す。
ゼロは、きっ、と前を向いて
体に力を込めた。
「都市の中心部は一気に抜けるぞ。
…ガーディアンに捕まらなければな!」
私は、小さく息を吐きながら
高まる気持ちを必死に抑えた。
都市で何が起こっているのか…。
昼間のことも考えれば、リベリオンの仕業だろうか?
それとも………?
私は、何か胸騒ぎがするのを感じていた。