集まった町の人々は、会話の内容が聞こえないようで、ざわざわと顔を見合わせている。




私は、大きな声で叫んだ。



「ゼロは、不器用だけど、とても優しくて温かい魔法を使えるわ!

あんたなんかよりも、よっぽど上級の魔法使いよ!バカにしないで!!」





その瞬間、ダリシーンの瞳が強く光った。



ラグナが凄まじい勢いで私に駆け寄り、
私の体を抱きしめた。





「逃げるわよ!私から離れないで!」





そう言うと、ラグナは薔薇色の瞳を輝かせる。




そして、私たちの体は大通りから消え去った。





その様子を見て、ガーディアンの一人が言う。





「ダリシーン王。魔力を追いますか?
あの女、王にとんだ無礼を……。」





ダリシーンは静かに言った。





「まぁよい。……人間なんぞ、放っておけ。」






そのあと、都市の町は、何事もなかったかのように静まりを取り戻した。