「その時の王はゼロの父親に負けないぐらいの力のある魔法使いで、都市の民からも慕われておった。」




と、グランは遠い目をして語る。




「その頃は、まだ禁忌などなかったから、王は遠征先で知り合った人間の女性と恋に落ちて、結婚したんじゃ。」




そうなんだ…。


王に求婚されるぐらい、美人だったのかな。



「しかし、二人の間に生まれた子が、何の魔力も持っていないということが分かってしまったのじゃよ。」



グランは険しく、悲しそうな顔つきで言った。



…人間が生まれてしまったという事?



「王家はその時大きく混乱してな。
後継もいない。


それに、その頃は今より治安が悪くてな。


王様が、混乱に乗じて城に入ってきた賊によって殺されてしまったのじゃよ。」





殺された!?


そんな事になったら、国中が混乱してしまう。




それに………




「残された奥さんと子どもはどうなったのですか?」




私はグランに尋ねた。



グランは、目を伏せて



「王が亡くなって、国が混乱したのはすべて、人間のせいだと罪を被されて、都市を追放されてしまったよ。


幼い子どもと一緒にな。」