グランは、優しい顔をして、答えた。



「わしの知っているやつさ。古い知り合いでね。わしはその人をとても尊敬していた。

……もう、亡くなってしまったけれどね。」





グランは、暖かいミルクを入れると
ゆっくりとそれを一口飲んで、続けた。





「ゼロの親父も……ゼロによく似ていたよ。わしは、彼の臣下として一番近くで見てきたから、よく分かる。

……禁忌がなければ、ゼロを残して死ぬこともなかったろうに。」




グランって、ゼロのお父さんの臣下だったんだ。



…ゼロが生まれた時にここに住んでいたってことは、ゼロのお父さんが王をやっている途中で城を辞めたってことなんだろうけど…。




私は、今までずっと気になっていた質問をグランに尋ねた。




「あの……どうして、力のある魔法使いが、人間と恋をしてはいけないという禁忌が生まれたんでしょうか?」




魔力に何らかの変化が出たりすることが原因なのだろうけど


私は、人間自体を汚らわしいものだと思っている魔法使いがいることに、ずっと疑問を持っていたのだ。





グランは、私の質問を聞くと、
うーん、と小さく唸って、


そして静かに語り出した。






「事の始まりは、百年ほど前のことじゃ。わしがまだ、城に使えて間もなかった頃の話じゃよ……。」