ドラゴンのソリは、意外と速い。
私は落ちないように、必死にソリにしがみつく。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だって。振り落とされたりはしないから。」
ゼロが少し笑って私を見る。
そんなこと言われたって…
空飛ぶソリに乗るなんて初めてのことだし
私には魔力がないから、もしもの時に
防御の魔法が使えない。
でも、慣れると、怖くはなくなってきて
ソリから見える綺麗な景色を楽しむ余裕が出てきた。
頬に当たる風が気持ちいい。
「闇町……見えなくなるところまで来ちゃったな……。」
私は水平線を眺めながら
ぽつり、と呟いた。
「……そうだな。
ジェノバさんの家に帰りたいか…?」
ゼロが静かに私に問いかける。
ジェノバのお墓に寄りたいとは思うけど
あの町でもう一度一人で暮らせるか、と
聞かれたら
私にはもう無理だ。
こんなにも世界が広いということを知ってしまった。
こんなにも、ゼロの隣が居心地がいいことを知ってしまったから。
もう、私は
昔の自分に戻ることはできないだろう。