ウサギとカメの物語



その後、給湯室にて10分ほどぼんやり過ごした私は、トボトボと、それこそカメ男のようにゆっくりした歩調で廊下を歩いた。


何があったとしても、仕事はちゃんとやらなきゃ。
仕事しないと生活出来ないんだから。


2年前に当時付き合っていた彼氏と別れた時でさえも、こんな思いにはならなかったのに。


お正月に引いたおみくじ、大吉だったのになぁ……。
全然大吉じゃないじゃん。
むしろ大凶じゃん。


あぁ、事務所に戻りたくない。
戻ったら熊谷課長もいるんだし。
課長への外線とか掛かってきたらどうしよう。
電話繋ぐの嫌だな……。


足取りが重過ぎて、自分でも笑えてくる。
カメ男のこと言えないじゃん。
私だってのそのそ歩いてる……。


すると、噂をすればなんとやら、というわけではないけれど。
須和がこちらへ向かって廊下を歩いてくる。
ヤツも息抜きかなんかで給湯室にコーヒーでも飲みに行くんだろう。


あはは、私とあんた、お似合いなんだってさ。
笑っちゃうよね、本当に。


すれ違ったあとに、カメ男に声をかけられた。


「なんかあったの?」


そんなことを言われると思っていなかったのでビックリして振り返ると、ヤツも私を振り返っていた。