「あ……」
思わず私の口から声が漏れる。
給湯室に入ってきたのは熊谷課長だった。
気まずい!
めちゃくちゃ気まずい!
なんとまぁ、このタイミングで2人になるとは。
こんな狭い給湯室で。
とりあえず「お疲れ様です」と笑って挨拶をすると、課長もいつもの爽やかな笑顔を浮かべたまま「お疲れ」と言ってくれた。
いつもと変わりない課長の様子になんとなくホッとしながら、
「課長もコーヒー飲みますか?私、作りますよ」
と声をかけると、コーヒーカップを持つ私の手首が熊谷課長によって掴まれた。
え?って思っているうちにあっという間にカップは課長に奪われて、シンクの中に置かれる。
カップも何も無くなった私の手を掴み直した課長は、そのまま私の体を給湯室の壁に押しつけてきた。
トンッと壁に背をつけたと同時に、課長の恐ろしく整った顔がグイッと近づいてくる。
キスされる!!
咄嗟にそう思って、顔を思いっきり背けた。
「なんでそんなに俺を避けてるんだ?」
顔を背けたままの私の耳元で課長のちょっと低い声が聞こえた。
やけにゾクッとするような色っぽい声。
でも、正直この時はドキドキというときめきよりも恐怖心の方が強かった。
だって課長の顔は、笑っていなかったから。



