もちろんそんなお願い、最初は断ったんだけど。
そういう大事なことは自分から伝えないとダメだよ、って美穂ちゃんにきちんと言った。
でも、美穂ちゃんはさっきのようなことはすでに彼に伝えているらしいのだ。
それでも一向に諦める気配のない神田くんに、戸惑っているという。
でもさ、どう考えても部外者の私が口出ししていい問題じゃないよね……。
神田くんからしたら「なんで大野さんが知ってるの?」って思うだろうしさ。
あー、困った。
私もなんで引き受けたかなぁ。
他人の恋愛に首突っ込んじゃダメでしょうが。
「大野さーん?」
「あ、はいはい。納期がズレる時はね……」
神田くんがやや呆れたような声を上げていたので、急いで彼の質問に答える。
答えながら、やっぱりモヤモヤと美穂ちゃんにお願いされたことを考えてしまうのだった。
どのタイミングで神田くんを呼び出そう?
むしろこの機会に呼んじゃう?
でもなぁ、なんて切り出そう。
いくら神田くんだってウザい先輩だな~、とか思ったりしそうだよね。
急がなくてもいいから、ゆっくりタイミングを見計らおう。
さりげなく2人になった時にでも。
私の説明をメモした神田くんが「ありがとうございました!」って爽やかに自分のデスクに戻っていったのを見送ってから、密かにため息をついた。
美穂ちゃんもさ、神田くんのこと少しくらい考えてあげればいいのに。
めちゃくちゃ素直で優しくて、そりゃ男らしさみたいなものはあんまり感じられないけど、2人はけっこうお似合いだと思うんだけどなぁ。
それこそ余計なお世話かな。
パソコンの画面越しに、一生懸命仕事をしている神田くんを見ていてそんなことを思っていた。



