お昼休みになったと同時にランチへ向かおうとイスから立ち上がる。
それは私だけじゃなくて、奈々と美穂ちゃんも一緒だった。


ベーグルサンドを食べに、いざゆかん!


と、3人で事務所を出ようとしたら。
ちょうど外回りから帰ってきた同期の田嶋と鉢合わせした。


「あ、田嶋」


私が彼の名前を呼ぶと、後ろにいた奈々が乙女モードに切り替わり「お疲れ様~!」と声を上げる。


田嶋は元の優しげな顔を歪ませて「はぁ、お疲れ……」と、とっても深~いため息をついた。


あぁ、さては外回りで厄介なお客様にでも遭ったな~。
可哀相に。
優しいが故につけ込まれることも多いんだろうな、田嶋の場合。


哀愁漂う彼の雰囲気に、奈々が即座に心配そうに声をかける。


「大丈夫?話聞こうか?今からお昼休みだし。どこかでランチしながらさ」

「えー……でも、いいのか?」

「いいよー!遠慮しないでよ!」


奈々の顔には分かりやすく「ラッキー!」っていう字が見て取れる。
そして、私と美穂ちゃんにアッサリと


「というわけで今日は私は不参加!ごめんね!」


なんて軽い口調で言い残して、お疲れの田嶋を引っ張っていった。


「奈々さんって、ほんとに田嶋さんのこと好きなんですね~」


って美穂ちゃんにも完全にバレちゃってますよ、奈々さん。


誰しもが見破れるほど分かりやすい「好き」のオーラ全開の奈々なのに、どうして田嶋ってばそれに気づかないのかしら。
鈍感同士で見てる方としては参る。


果たして本当に今年中にはケリをつけられるのか見物だなー、って高みの見物気分。