こんなことになるなら、もう少し女子力の高い服を着てくるべきだったな。
何の変哲もない白のボウタイブラウスに何の変哲もない膝丈の細身なエンジ色のスカート。
これからは抜かりのない、いつでもデートに行けるような服で仕事に来なきゃだな。
なんてね。
うふふ、と止まらないニヤケ顔でひとまず会社を出る。
熊谷課長も定時に上がるはずだから、間もなく退社だと思う。
そんなに遠くない場所で待ってよう。
私は会社から歩いて3分のコンビニで待つことにした。
コンビニで雑誌を立ち読みすること15分。
熊谷課長から電話が来た。
「お疲れ様です、熊谷課長」
『お疲れ。今どこにいる?』
「会社のそばのコンビニです」
『分かった、そっちに行くね』
熊谷課長の低くて甘い声がこれまた耳障りが良くてたまらないのよね~。
仕事中もしょっちゅう聞き惚れちゃったりして。
まぁそのせいで仕事に集中出来てなかったからいけないんだけどさ。
ダメだダメだ。考えを改めないと。
11月に入ってすっかり冷え込んできて、朝と夜は厚手のアウターが無いとけっこう寒い。
熊谷課長はウールのスマートなシルエットのコートを身にまとってコンビニに現れた。
「大野さん、お待たせ」
「お疲れ様でした」
ペコペコ頭を下げていると、熊谷課長の手が私の右手を取る。
えっ、えっ、えっ!?
何がなんだか分からないうちに彼に手を引かれてコンビニを出て、そのまま歩き出した。
きゃーーーーーーーー!!
もしかして手を繋いじゃってる!?
課長の手は生温くて、その指が私の指に絡むようにしながら握り合った。



