ウサギとカメの物語











その次の週の、水曜日のこと。


水曜日は会社の基本方針としてノー残業デーと称して、なるべく定時で上がるように言われている。


さっさと仕事を終わらせて、スーパーでビールと大好きな辛口ビーフジャーキーを買って、冷蔵庫にストックしていたジャーマンポテトと特大サラミをおつまみにして部屋着で飲みたい!
今激ハマりしているイケメン俳優の主演ドラマを見ながらウハウハ妄想したい!


それだけを目的に黙々と仕事に打ち込んだ。


今週から真野さんが復帰し、「1週間もお休みもらっちゃってごめんね~」なんて言いながら博多通りもんをお土産に持ってきた。
聞けば旦那さんのお父さんが亡くなってしまって、義実家の福岡に1週間行っていたらしい。


カメ男に指摘された3件のミスを私は包み隠さず真野さんに伝えて、今後は絶対に気をつけると話した。


「コズちゃんが仕事に一生懸命なのは知ってるから心配してないわよ」


と彼女は言ってくれてたけど。
改めて気を引き締めなくちゃと思っていた。




なんとか定時で仕事を終わらせた私は、奈々と一緒に女子更衣室で帰り支度をする。


奈々はこれから大学時代の友達とご飯を食べに行くからと、簡単に化粧直しをしてから早々に更衣室を出ていった。


ノー残業デーとあって混み合う女子更衣室の中で、ふとお昼休み以降1度も見ることのなかった自分の携帯のディスプレイに目を向ける。
画面をつけると、メールが入っていた。


送信者は熊谷課長。
『今夜空いてる?』


きゃおーーーーーーーーーー!!


どう考えても誰も私の携帯の画面なんて気にする人なんかいないのに、無駄にキョロキョロと挙動不審な動きをしてしまう。
ニヤケ顔を抑えきれずにウキウキしながら即座に返事を送った。
『空いてます』と。