怒りは収まらなかったけど、気を取り直してアイスにスプーンを差し込んで口へ運ぶ。
甘くて濃厚でクリーミーで。
バニラアイスを食べるこの瞬間が、1日の中で1番好き。
だから家の冷凍庫にはカップのバニラアイスがたくさんストックされている。
このために頑張ってるようなものだから。
「あー、美味しい。疲れが吹っ飛ぶわ~」
至福の時間を過ごしていると、カメ男が落ち着いた声で感想を述べる。
「美味い。けど、甘ったるい」
「その甘ったるさがいいんでしょーが」
「いいか悪いかは人それぞれ」
ったく!
真正面から否定してきたわけじゃないけど、バニラアイスをバカにすんなよ!
私の世界で1番好きな食べ物なんだから!
だけど、まぁ。
意外と楽しかったからいいか。
たくさん飲んだお酒がいい感じに頭のてっぺんからつま先まで巡って、すごくいい気分だった。
酔っ払ってるとかそういうことじゃなくて、ちょうどいい気持ちよさ。
ちょうどいい空気感。
心地いい気持ちでバニラアイスを食べ終えた。
4人で揃ってお店を出て、駅まで歩く。
少し先を歩くカメ男と田嶋の後ろ姿を眺めつつ、秋の冷たい風を全身に受ける。
明日と明後日は休みだし、やっぱり金曜日の夜は楽しくて仕方ない。
あまりに気分が良かったから、のそのそ歩くカメ男の後頭部にチョップでもかまそうかと思っていたら、隣の奈々に声をかけられた。
「今日はゴメンね、コズ」
「え?なにが?」
「須和と飲むなんて退屈だったでしょ?」
退屈?
えーと……。
あれ、退屈ではなかったような。
むしろしゃべりまくってストレス発散になったような。
むしろ頬を触られてうっかり、本当についうっかりドキドキしてしまった自分が憎い。
そんなバカな。
「あー、まぁ、そうでもなかったよ。大丈夫。気にしないで~」
微笑みながらそう言ったら、奈々は私の言葉には特に突っ込んでくることもなく「それならいいんだ~」って笑っていた。
奈々の表情から察するに、彼女はとてもとても楽しい時間を過ごせたようで。
それがなによりだった。
私たち4人は、駅でそれぞれ帰路についた。



