ウサギとカメの物語



冷たく冷やした小皿にゴルフボール大のバニラアイスが2つ。
それがひと皿ずつ、私と須和の前に差し出された。


それでは早速いただきまーす!


目を輝かせる私に、なんとカメ男がストップをかけた。
「ちょっと待って」って。


「え、なによ?」


不満全開でヤツの顔を睨みつけていると、ヤツは身を乗り出して右手を私に近づけてきた。


なんだなんだ!?
と思っているうちに、彼の手が私の左頬に触れる。


途端にどうしてか分からないけれど、ドキドキしてしまった。


目を丸くしてそのまま動かないでいたら、ヤツの右手が私の左頬から移動して目の前に掲げられた。


指先に、玉子らしきカス。


「なにこれ」


寄り目になってつぶやくと、カメ男が笑った。
いや、正確に言うと口元を緩めただけの、微かな笑み。


「ずっと気になってた。頬についてたから」

「は、は、早く言いなさいよ!!」


触られた左頬を押さえて私が声を上げると、ヤツは口元を緩めたまま「ゴメン」と謝る。
絶対に悪いと思ってないような顔。


「面白かったから放置してた」

「最初に何か言いかけてたのってこれのことだったの!?一生呪ってやる!」

「どうぞご自由に」


なんでもない、とか言ってたくせに!
あの時に「玉子のカスついてるよ」って言ってくれればよかったのに!


許すまじ、須和柊平。