ウサギとカメの物語



それからの1時間強。
なんだかんだで私と須和の会話は持ちこたえた。


というか、基本的に私がしゃべっていた。
一応ヤツも聞き役にはなってくれたし、相槌で「うん」という言葉は頻繁に発していた。
それで、たまに質問してきたりもするのだ。


おぉ、会話が成立している!
と、妙な感動まで感じたりして。


この男に大したリアクションを求めているわけではないので、私もそれを踏まえて言いたい放題だった。


オチの無い学生時代の面白話とか(ヤツは1ミリも笑わなかったけど)、
大学の時にお世話になったバイト先の奥さんの話とか(清楚に見えて実は不倫してたんだって!わお!)、
就職活動でのブラック企業の見分け方とか(面接で脱げとか言われたことないし~!)、
最近ハマってるドラマの話とか(好きな俳優の話を延々としたらヤツに欠伸されたけど)、


どんな反応をするのか楽しみ、とかそういうのは一切ナシで話したいことを話しまくっただけ。


自分で話しながら爆笑してたら、カメ男に


「笑い声がでかい」


と呆れ顔をされた。


仕方ないじゃんよ。
それが私なんだから。
面白い話をしようと思うと、先にそれを思い出して笑っちゃう私のクセ。
こればっかりは変えられないんだからさ。


でもカメ男も、最初の頃にしていた退屈そうな顔は見せることが無かった。


テーブルの上の料理がすっかり空っぽになってお腹もパンパンに満たされた私は、女将さんにバニラアイスを2つ注文した。


「アイス?」


怪訝そうに私を見つめるカメ男に、腕を組んで当然のようにうなずいて見せた。


「いつもシメはバニラアイスなの。家でも必ず」

「なんで?」

「お酒飲んだあとのバニラアイス、めちゃくちゃ美味しいから食べてみ!疲れた体に染み渡るから!」

「……ふーん」


想像通り、カメ男の反応は薄かった。
興味無さそうな顔。


男と人って食後のデザートとか、コース料理にでもついてこない限りあんまり頼まないもんね。
理解しろって方が無理な話か。


そんな私たちの元へ、冷たいバニラアイスが届けられた。