そこでふと思い出す。
カメ男に倉庫で言われた言葉。
『熊谷課長には気をつけた方がいいよ』
それがどうも私の中で引っかかっていて、喉につっかえた魚の骨みたいな感じで取ろうにも取れなくてもどかしくなるような、それくらい気になっていた。
「ねぇ、須和。熊谷課長には気をつけた方がいい、って言ってたよね?あれってどういう意味?」
私が尋ねたら、ヤツにしては珍しくメガネの奥の細い目を少し見開いてこちらを見つめてきた。
どうやら驚いているらしい。
ヤツは頬杖をやめて座り直すと、ボソッとつぶやいた。
「聞こえてないと思ってた」
「聞こえたよ」
「そう」
こいつ、答える気無いな。
いっつもボーッとしたような顔をしてるけど、なーんか考えてそうな気がする。
意外と複雑な男なのかも。
「教えてよ」
私がグイグイ攻めてくるからか、カメ男はポリポリとこめかみのあたりをかいて、それからメガネを指でクイッと上げた。
そして、一言。
「大野ならそのうち分かると思う」
分かんないから聞いてるんですけどおおおおお!!
通訳!
誰か通訳を読んできて!
この男に通訳をつけて!
何を言ってるのか、何を言いたいのか、さっぱり分かりませーん!!
イライラしている私には目もくれず、ヤツは早いペースでビールをお代わりして、おつまみもパクパク食べていた。
案外よく食べてよく飲むのね、なんて思った。
別にいらない情報だけど。



