ウサギとカメの物語



さすがにあと1時間近く沈黙の中でお酒を飲むのはつらすぎる。
意を決してカメ男に話しかけた。


「あの2人、どう見ても両想いだと思わない?」


話題が無い。
何を話せばいいのか分からない。
そうなるともう話のネタはヤツらしかいない。
すぐそこであははおほほと笑い合っている、隠れ両想い。


カメ男は視線をカウンター席の2人に移して、もぐもぐと口を動かしながらうなずいた。


「そう思う」

「あんた田嶋と仲いいんでしょ?言ってあげたらいいじゃない、告白しろって」

「大野が言えばいいでしょ」

「いや……だってさ、そういうのって本人たちが頑張るべきことだと思うからなかなか口出しできなくて……」

「同感」


………………会話、30秒で終了。
つまんねぇ男だな、おい!


感情を隠し切れないから、見せつけるようにため息をついてやった。
はぁぁぁ~、って。大げさに。


そしたらさすがにカメ男も私のため息に気づいたらしくて、こっちを見てきた。
何か言いたげな目をしている。


「なに?」

「……いや。なんでもない」


言えよ!!
気になるっつーの!!


眉を寄せて目で抗議しているのに、カメ男はまったく気づくことなく早いペースでビールを飲み干した。


時々、奈々の高笑いが聞こえてきたりして。
田嶋との時間が楽しいんだなって伝わってくるような笑い声。


いいな、本当に羨ましい。
私だって熊谷課長と週末を過ごしたかったわ。