すっかり奈々のペースに飲み込まれながらお酒と料理に舌鼓を打っていると。
テーブルに置いていた奈々の携帯が鳴った。
だし巻き玉子のフワフワ感をほっこりしながら味わっていた私の耳に、奈々の乙女な声が飛び込んでくる。
「もしもーし!順?え、さっき仕事終わったの?お疲れ様~!」
奈々は携帯を耳に当てて、すっかり恋愛モードで話をしている。
今確かに彼女は「順」と言っていたから、電話の相手は間違いなく同期の営業課の田嶋だ。
彼女の3年に渡る片想いの相手であり、究極の優男及び草食系男子。
週末だから、仕事終わりに奈々と飲もうとでも思って連絡をくれたんだろうな。
いいなぁ。私なんて熊谷課長からそういう突然のお誘いとかは受けたことないから、ちょっと羨ましい。
田嶋もこうやって奈々に連絡よこす勇気があるんなら、さっさと告白しろっての。
どう見たって両想いなんだからさ。
「うんうん、会おうよ~。今ね、コズと一緒に酔いどれ都にいたからさ。そうそう、駅裏の!うん、来てー!」
いつもよりワンオクターブほど高めの声で、明らかに今いるお店に田嶋を誘っている奈々。
私は慌てて彼女の肩を叩いて、ブンブンと首を振った。
「田嶋来るの!?じゃあ私は帰るから!」
と言っても、奈々は「いいから静かにしててよ」みたいな顔をして私を黙らせる。
どう考えても私がいたら邪魔者でしょうが。
嫌だよ、両想いなのにモジモジして告白出来ない2人を眺めながらお酒を飲むのは。
やがて電話を終えた奈々は両手をパン!と合わせて、神様かはたまた仏様にでも拝むように私にひれ伏した。
「コズ様~、コズ様~。どうか順にうまいこと言って気持ちを引き出すように誘導してくだされ~」
「はぁ~!?無理に決まってるでしょうが!人に頼るな!」
恋愛の肝心な部分はさすがに自分の力でどうにかしてほしいんだけど!
まぁ、それが出来ないから3年もこの人たちは平行線なのよね……。



