悶々と考えを巡らせている私の顔を覗き込んだ奈々は、訝しげに目を細めたあとニヤリと口角を上げた。
「さてはコズ、すでにその人とヤっちゃったな?」
「ブッ!!」
思わず飲んでいたビールを吹き出す。
あまりに飛び散ったせいで、テーブルに並んでいたおつまみが私の口から出たビールでびしょびしょになった。
それを見て奈々が大爆笑している。
急いで手元のおしぼりで濡れたテーブルを拭いていたら、カウンターから女将さんが素早く追加のおしぼりを持ってきてくれた。
彼女が都さんという名前で、この居酒屋の店名にも使われている美人女将だ。
「大丈夫?若い子は楽しそうでいいわねぇ」
と女将さんは落ち着いた小豆色の着物姿でニコニコ微笑んでいた。
もはや私と奈々はこのお店に通い過ぎて、他のサラリーマンのおじさんに負けないくらいの常連客になりつつある。
「すみませ~ん……。おいっ、奈々!!」
女将さんにやんわり笑顔を返してから、鬼の形相で奈々を睨みつけた。
彼女はケタケタ笑いながら、ビールまみれになった枝豆を美味しそうに食べている。
「冗談よ、冗談。も~、コズの反応には毎度笑わせてもらってるわ」
「言っておくけど、私はちゃんと付き合ってからじゃないとそーいうことしないからね!」
「分かってるって。意外とそのへんはしっかりしてるもんね」
「意外と、って聞き捨てならないんですけど」
くそぅ、奈々のやつ!
楽しんでるな、私の反応を見たいがために。



