「こっちだって願い下げよ!エロメガネ!」
「……あのさ、どうでもいいけど降りてきてくれない?」
こっちが臨戦態勢に入っているというのに、カメ男はまったく相手にすることなく手招きしている。
仕方なく棚から降りておずおずとヤツの元へ行くと、彼は私の手から伝票の束を抜き取った。
なんというタイミングで現れるんだと眉を寄せていたら、カメ男のメガネの奥の目が若干蔑んだような色を浮かべた。
「怪我したらどうするの」
「しませんよ~。須和が来なければチョチョイのチョイでこの伝票しまうところだったんだから」
「よっこらせ、とか言ってたから信憑性が無い」
一体どのへんから見てたんだこの男!
絶対パンツ見た。間違いなく見た。
どうしてくれよう!
ムキーッ!と食ってかかりそうな私をよそに、須和はのそのそと棚の一段目に足をかけて、そのまま手を伸ばした。
ヤツの手はちょうど1番上の棚に届き、余裕で伝票の束が納まる。
あまりにも軽々とやってのけたので、それがさらに私をイラつかせた。
「脚立が壊れてからは、真野さんに代わってここに伝票を置きに来るのは俺の仕事だから」
私の様子を知ってか知らずかカメ男はそう言って、
「だから伝票は俺にちょうだい」
と続けた。
「分かった。ありがとう」
まぁ、一応助けてもらったみたいなものだから。
素直にお礼は言っておいた。



