ウサギとカメの物語



バーチャル木の葉が私の前を舞う。
これは困ったぞ、と。


カメ男の言っていたことはこっちの意味だったのか。
脚立が壊れてるから私には届かないんだと。
そういうことだったらしい。


だったらそう言ってくれてもよかったじゃーん。
あいつ言葉が足りないよ~!


伝票を抱えたままもう一度さっきの棚に戻って見上げる。


……よじ登ればよくない?


中高校生時代はバレーボール部に所属してたし(関係ない)。
体力には自信があるし(ただし高校卒業後運動ゼロ)。


履いていたフレアスカートをたくし上げて、「よっこらせ」と言いながら棚の一角に足をかける。


おー、いける!いけそう!


なんだか楽しくなりながら三段目をよじ登ったところで、下から呆れたような声が聞こえた。


「何してんの」

「ぎゃあああっ!」


急に声をかけられたから、私は思わず獣みたいな声を上げてしまった。
見下ろすと須和がいて、あろうことかため息までついている!


「変態!スケベ!パンツ見たな!」


慌ててたくし上げていたスカートを片手で直していたら、カメ男は冷静な声で


「頼まれても見るもんか」


と返してきた。