カメ男のおかげで無事に印刷を終えた資料をデスクに置いて、印刷したてのホカホカのレジュメをホチキスでまとめる。
横目で2号機プリンターを見てみると、いまだに須和が修理に励んでいるようだった。
そんなヤツのところへ2年目の女子社員の小巻ちゃんが何かを話しかけているのが見えた。
どうやら彼女も印刷をしたかったらしい。
結局私と同じように3号機プリンターへ出力し直すように言われたのか、足早に私の隣のデスクへ戻ってきていた。
ホチキスでまとめた総部数30部の資料。
それらの束に、今日の会議で特に必要であろう箇所に付箋紙を貼り付けて、ようやく完成した。
時計の針は14時50分。
セーフ!ギリギリ間に合った〜。
あとはこれを会議室に持って行って……。
と、席を立った時に斜め向かいに座る4年目の童顔の神田くんが私に声をかけてきた。
「あ、大野さん。外線8番に外山建設の倉持さんから電話入ってますよ」
「おっと。ちょっと急ぎの用事あるから、折り返すって言ってもらっていいかな?」
今電話に出たんじゃ、この資料を会議室に届けられなくなるじゃないのさ!
と、内心ヒヤヒヤした。
で、急いでたから私の足はもうデスクを離れかかっていたのだけれど。
神田くんが困ったように眉を寄せたのだ。
それを見て足を止める。
「でも、なんかこっちも急ぎみたいなんですよ〜」
ぎゃあ〜、どうしましょ!
取引先のお局様(あくまで声からの想像、違ってたらゴメンナサイ)を待たせるか、定例会議に使う資料を今すぐ会議室に持っていくか。
パニックになりかけた私の頭は2つを瞬時に天秤にかける。
その瞬間、両手に抱えていた資料の束を誰かに引き抜かれた。
えっ?と思って横を向いたら、そこには須和がいた。
「電話に出て。これは持っていく」
それだけ言って、資料を片手にゆっくりとした足取りで事務所を出ていってしまった。



