ラーメンランチを終えて会社に戻ってからの私は、電話の外線も内線も一切取らずにひらすらパソコンの画面と向き合った。
15時までの定例会議に間に合わせるように資料を作らなくてはならない。
急遽、熊谷課長に頼まれた追加の添付資料は午前中の早い時間に作り上げていた。
正確に言えば資料はもう完成してはいたものの、ダブルチェックの最終確認が中途半端だったのだ。
誤字脱字していないか、データの抜けがないか、先月までの比較資料に誤りはないか、チェックしなければならないところは余すところなく確認する。
いつもの私なら午前中のうちに確認作業を済ませ、必要部数を印刷し終わって、この時間には付箋紙を貼り付けているところだ。
大幅な遅れを取り戻すべく、電話のコール音は聞こえない振りをした。
最後のページを確認し終えて、「よしっ!」と1人でつぶやいてからパソコンの画面の印刷ボタンを押した。
ウィーン、とプリンターが起動する音が聞こえて、ひとまず安心。
同じようなレジュメが30部も印刷されてくるので、すべて出力が終わるまでにかなりの時間がかかるはずだ。
あとはそれをホチキスで留めて、付箋紙を貼って……。
時計をチラリと見たら14時20分。
よしよし、いい感じだ。
回転イスの上でギュ〜ッと背伸びをして、立ち上がる。
給湯室でコーヒーでも買ってこよう。
飲んで戻ってきた頃には印刷も終わってるでしょ。
軽い足取りで事務所を出て、廊下を少し歩いたところにある給湯室へ入る。
職員用、と油性ペンで書いてあるコーヒーの粉が入った袋を戸棚から出して適当なカップにお湯を注ぐ。
コーヒーの苦い香りが、身にしみるみたいでいいんだな。
仕事中の安らかなひとときだったりする。
正味5分ほどの短いコーヒータイムを過ごした私が事務所に戻ると、プリンターの前に須和が立っていることに気がついた。
カメ男はゆっくりした動作でしゃがみ込んで給紙トレイを開けたり、インクリボンの確認をしたり。
んん?何をしているんだ、ヤツは?
と、悠長に考えていられたのは一瞬だった。
大量に印刷しているはずの定例会議の資料は排出トレイを見るとまったく印刷されておらず、それを見た途端に背筋が凍った。
たまにプリンターの調子が悪くなる時があるって奈々がぼやいていた事があったけど、もしや、まさか、それが今!?



