なんであの男は平気で「興味ない」とか「どうでもいい」とか言えちゃうんだろう。
あいつは昨日私にも似たセリフを言い放ってたし。
実際そうだとしても奈々は悩んで相談したんだから、せめて少しでも親身になって話を聞いてあげればいいのに……。
そういう私だって、昨日の朝まではヤツに対して同じような感情を持っていたといえばそれまでなんだけど。
しかし、昨日のことがあってからというもの、今日はやけにカメ男が目につくし、こうやって奈々との会話にもさりげなく登場してくるし、急に私の生活に入り込んできたみたいで悔しい。
須和って存在感もなにも無いヤツだったはずなのに!
とりあえず奈々には、怒りの炎を僅かばかりでも鎮火させてあげるために
「須和にはアドバイスなんて出来っこないんだからさ、自力で頑張るのみってことよ。きっとね」
と言葉を添えておいた。
まだカメ男にプンスカ怒りながらも、彼女は「確かにそうよね」と納得していた。
須和に関しては、奈々も私と似たくらいの予備知識しか無いはずだ。
おそらく田嶋を好きになっていなければ、彼と仲のいい須和のことも眼中にすら入らなかっただろうから。
というか、むしろ私は須和と田嶋が仲がいいことすらも知らなかった。
一緒に入社した同期はそれなりに人数はいたものの、入社式の日に支店に振り分けられたからてんでばらばら。
同期で集まるとしたら、毎年年末に「同期会」と称した忘年会があるくらいだ。
幹事をやったことのない私としては、ただ参加して楽しく飲んで職場の愚痴を気軽に言い合う忘年会、くらいの認識だった。
私のいる本社には、総務課にも同期がいる。
久住という仕切り屋の女で、彼女がたいてい同期会の幹事をやっているのだ。
社員旅行とかも張り切って受付やらなんやらやってたなぁ……。
地域密着型を目指しているからか管理職以外の社員の異動もほとんどない。営業課だって地区を変えるくらいで支店の異動は少ない。
あるとすれば、例えば同じ部署内に恋人同士がいたとして。社内恋愛であまりに近い場所にいるのはさすがにまずいということで、異動を命じられる場合はあるらしい。
そういえば、熊谷課長は半年前まで違う支店にいたんだっけ。
本社に異動してきたのは営業課の成績の向上のため、という名目だったけれど。
前にいた郊外の支店ではその腕を奮って営業成績がかなり良かったというから、本社では期待されているんだろうな。
そこで思い出した。
明日の夜は、その熊谷課長とご飯に行くんだった。
こんなことになるなら、前もって睫毛エクステとかネイルとか新人の美穂ちゃんみたいにやっておくべきだったなぁ、なんて反省した。
やっぱりそういうのって普段の生活がものを言うよね。
ラーメンのスープを飲み干しながら、急に明日の約束が不安になってしまった。



