トロトロの柔らかいチャーシューを堪能しながら、煮えきらない2人の関係に変化をもたらすべく、奈々にひとつの提案をした。
「でもさ、もう3年も想ってるんだよね?私たち今年で27になるんだよ?田嶋だって29でしょ?そろそろケリつけないとダメでしょ〜!今年中にはハッキリさせておいた方がいいと思うよ。あと3ヶ月もあるんだから、押せ押せ!」
他人事だと思ってそんなことを口走っていたら、奈々が思い出したようにぐるんっとこちらを向いて箸を突き出してきた。
なぜかやや機嫌の悪そうな顔をしている。
「そのセリフ、土曜日に須和にも言われたわ」
須和、という名前が突然登場したから驚いてしまい、むせてすすっていた麺が食器に少しだけ逆流した。
ゲホッゲホッと咳をする私を、周りに座る中年のサラリーマンが面白そうに見ている。
くっ、見ないで!
わざとむせてるわけじゃないっつーの!
「ゲホッ……、で?須和がなんて?」
「あいつ田嶋と仲いいからさ、宴会の時に打開策を聞いてみたの。そしたら今年中にケリつけろ、って」
奈々はふと箸を置いて、おそらくあのカメ男のマネであろうか。体を左右にゆっくりユラユラ揺らしながら、綺麗に化粧した目尻を両手で引っ張ってわざわざ一重にして
「飲み会のたびにこの話に付き合わされるのは面倒。興味ないからさっさとくっついて」
と言って、顔を元に戻すと、ムキーッて怒ったように「須和のヤツ、こんな風に言ってきたんだからーッ!」って憤慨していた。
あー、なんか目に浮かぶ。
ヤツがしれっとそういう失礼なことを言っている姿。
昨日やりとりした短い会話だけで、なんとなく須和という男がどんな人なのかは分かったような気がしている。
たぶん今までの私なら、須和の話題はスルーしていたんだろうけど。



