ダブルチェック用の目的のファイルと、熊谷課長に頼まれた追加の資料が載っているファイルを抱えてデスクに戻り、ドサッとそれらを机の上に置いて、よっこらせとイスに腰掛ける。
ここ数年でオバサン化してきたなぁ、としみじみ感じながら、さっきカメ男に渡された袋を指先でつまんだ。
頬杖をつきながら須和のデスクに目を向けると、ヤツは固定機でどこかに電話をしながらパソコンの画面をボーッと見ていた。
留められているセロハンテープをペリッと剥がして、袋を開ける。
袋を振って、机の空いているスペースに中身を出した。
机の上に転がった物を見て、私は「お?」と声を出してしまった。
土曜日の夜につけていたはずの、ピンクゴールドのスタッズピアスだった。
けっこう気に入っていたのに昨日帰ったら無くなっていたから、酔っ払ってどこかに置いてきたのかと思っていた。
左右両方揃っていたものの、2つともキャッチは無い。
ということは、ヤツのベッドで寝た時に耳から外れてしまったんだ。
それを発見して、忘れ物だと返してくれたのだろう。
わざわざこんな袋にまで入れて、律儀というかなんというか。
そこで、私は思いとどまった。
違う。そうじゃない。
これを渡してくる時、彼はどうだった?
周りに見えないようにこっそり渡してくれた。
それで万が一誰かに見られても問題ないように、袋に入れてくれた……とか?
あくまで想像だけど、須和は須和なりに私を家に泊めたことが会社側には知られないようにしてくれているのかな。
ろくにお礼も言わなかったしちょっと申し訳ないな、と初めて思った。
ふと目を上げると、須和がカメのようにのそのそと事務所を出ていくのが見えた。
本当にマイペースな、ゆっくりな動き。
見ている方は急かしたくなるような歩き方と仕草。
でもまぁ、それなりにちゃんと気は使う人なんだなって認識は出来た。
ピアスは大事に袋に戻して、引き出しからお財布を取り出しその中へしまった。
もう無くさないように。
ちょっとだけ、カメ男……じゃなくて。
須和柊平に感謝しながら。



