腕時計をチラリと見ると、時計の針は20時前だった。
今から同期会が開かれている居酒屋に行っても、おそらく距離があるので着くのは20時半くらいになってしまう。
みんないい感じに酔っ払っているだろうから、その中に入ってくのは若干気が引けるなぁ……。
そんなことを考えていたら、隣でカメ男が口を開く。
「同期会、今から行っても無駄だよな」
「……うん、まぁ。時間的にもね」
でも一応参加するって伝えてあるし、行かないと久住になんて言われるか。
だからカメ男もなんだかんだで同期会に顔だけは出すと思っていたのに、ヤツの考えはそうじゃなかったらしい。
「同期会に行くのはやめて」
ボソッとつぶやいたカメ男は、おもむろに私の方を向くと
「2人で飲みに行かない?」
と言ってきた。
ドッキーン!と不覚にも胸が高鳴ってしまった。
なにしろカメ男から誘われたことなんてただの一度も無かったから。
深い意味なんて無いんだ、きっと。
ただ単にゆっくり飲みたいだけなんだろうけど。
だって私、こいつに振られてるし。
また仲のいい同期に戻ろう、って言われてるような気がした。
それならそうで気持ちの軌道修正をしなくちゃならない。
「好きな人」から「ただの同期」に。
「酔いどれ都に行く?」
「うん」
私の提案を、ヤツが断る訳なんて無かった。
あそこは私たちの大好きなお店だから……。



