でも、あれ?と、違和感を感じた。
どうして奈々がいるのにカメ男がいないんだろう?
同じ事務課なんだから、帰りの時間もだいたい同じなはずだ。
ましてや仲のいい田嶋は早めに退社出来たっていうのに。
寒いから早く中に入りたいね〜、ってつぶやいている奈々と田嶋に、さりげなく尋ねてみる。
「ねぇ、カメ……じゃなくて、須和は?」
「あぁ、あいつね」
奈々はポリポリと頬をかくと、ちょっぴり不満げに口を尖らせた。
「まだ仕事が終わらないらしくてさぁ。先に行ってて、って言うのよ。手伝おうか、って声かけたんだけどね」
「そうなんだ……」
「まぁ、でも須和のことだから、チャッチャと終わらせてそのうち来るでしょ」
あっけらかんとして笑う奈々の言葉の後半は、もはや私の耳には届いていなかった。
仕事が終わらない、って。
だってあいつ仕事はかなり効率よくやってるし、集中力だって凄いよね。
それでも仕事が終わらないなんて、私の仕事を全部1人で引き継いだせいじゃないの?
引き継いでもらった当の本人の私が、ちゃっかりここにいてもいいのかな。
ヤツがまだ仕事してるのに、ワイワイお酒とか飲んじゃっててもいいのだろうか。
…………そんなの嫌だな。
「私……、ちょっと会社戻る」
ポツンとつぶやいた私の言葉に、奈々も田嶋も、久住でさえも。
「え?」と目を点にして聞き返してきた。
「同期会には遅れて参加する。ごめん」
それだけ言って、私はその場から駆け出した。



