ウサギとカメの物語



19時より少し早く居酒屋に到着した私は、お店の前でみんなを待つ久住を見つけた。


「久住!お疲れ様〜。早いね〜」


私が声をかけると、彼女はくるりとこちらを向いた。
大きなレンズのメガネの縁をクイッと指で持ち上げて、「あら」と久住が口の端を片方上げる。
笑っているらしい。


「大野さん!素晴らしいわ!予定より10分早いなんて優秀ね!」


相変わらず語気を強めた話し方で、久住がツカツカと私に歩み寄ってくる。


靴は高校生が履くみたいな黒革のローファー。
そして今日の彼女のコートは、ものすごいロングのムートンだった。
やっぱり彼女のファッションセンスは独特で、そしてとても個性的だ。
きっとコートを脱いだらまた凄いんだろうなぁ。
これでもかってくらい巨乳を強調した服を着てるんだろうなぁ。


「あなたが一番乗りよ!少しみんなを待ちましょ!」

「は、はぁ……」


久住の言葉に曖昧な返事を返す。
少しばかり時間をつぶしてくればよかったなー、なんて。


でも、そのあとすぐに聞き慣れた声が聞こえてきて、私は希望に満ち溢れた顔で振り返った。
奈々と田嶋が並んでこちらへ歩いてくるところだった。


「奈々〜!」


と彼女を呼ぶと、奈々もすぐに私に気づいて笑顔になった。


「コズ〜!なんかめちゃくちゃ久しぶりな感じ〜!」

「新鮮だよね。変な感じ!」


とりあえず久住と2人きり、という状況は免れたので奈々たちの早い到着は正直嬉しかった。