ウサギとカメの物語



腕時計を見ると、時刻は18時を過ぎていた。
今から電車に乗るとして。


19時スタートの同期会には余裕で間に合いそうだ。
駅前の全国チェーン店の居酒屋を予約してくれているはずだから、そこへ行って久住の名前を伝えればいい。


久住、張り切って仕切ってたもんなぁ。
年に一度の同期会。
いつも声をかけてくれて頑張ってくれてる。
いつもなら私もウキウキで参加していたんだけど。


でもなぁ……、今日はほんとは行きたくないんだよね……。


行ったら否が応でもカメ男もいる訳で。
たとえ席が近くなくたって視界には入るだろうし。


そもそも私はいつも奈々と飲むじゃない?
でも奈々はきっと田嶋とも飲みたいと思うんだよね。
そうなると田嶋はカメ男と仲がいいし、結局4人で固まらないといけないような気がしてきて。


そんなの耐えられないな、ってズーンと心が重くなった。
漬物石でも乗せてるみたいに重くて重くて。
いっそのこと潰れてヤツから私の存在が見えなくなればいいのに、とさえ思った。


そんなネガティブの塊と化した私を乗せて、電車は動き出したのだった。