「う〜ん、合コンかぁ……」


いまいち気乗りしない私の返事がさやかには不服だったらしく、探るような声が電話から聞こえてくる。


『なによ、いつもなら食いついてくるくせに〜。イケメンが来るなら行く、とかなんとか言ってさぁ』

「え、イケメン来るの?」


たった四文字のカタカナのその言葉に、ちょっぴり過剰に反応すると。
さやさはフフンと鼻で笑った。


『聞いて驚け、相手は消防士よ!職業がすでにイケメンじゃなーい?』

「しょ、消防士……」


ぽわわ〜ん、という平和な効果音と共に、好みの顔をした男の人が消防士の服を着て笑顔でこちらを見ている、ってそんな怪しい妄想を勝手にしてしまった。


『友達のお兄ちゃんが消防士で、それ繋がりで集まったのよ。30日の夜に地元でやろう〜ってことになって。梢も来なよ、ね?』


わぁ〜、めちゃくちゃ行きたい。
消防士だよ?
ねぇ、消防士だよ?
きっと筋肉質な素敵な体してるんだろうなぁ。
正義感も強くてさ。
趣味は筋トレです!とか言うんだよね、きっと。


行きたい行きたい行きたい!
行きたいけど〜!!


でもなぁ……。


「私さぁ……、実は好きな人いるんだよね……」


なんだか隠すのもおかしいし、と思って正直に話してみたものの。
さやかは当然のごとく、


『え?その人と付き合えそうなの?違うんでしょ?そしたら合コン行くくらいなんてことないっしょ。行くだけタダだよ?消防士だよ?』


と、私を参加させる方向に導きたいらしく、それらしいことを言って説得してきた。