岩沼支店にヘルプに行くまで、あと3日というところ。
そんなある日、地元の友達からかなり久しぶりに連絡があった。
それは仕事を終えて、一人暮らしをするアパートに帰ってきたタイミングで携帯に着信が入ったのだ。


狭い玄関でショートブーツを脱いでいると携帯が鳴ったので、おや?と思ってバッグから取り出す。


すっかり見慣れてしまった、携帯の割れた画面を操作すると『さやか』という名前が表示されていた。
さやかは小中学校の同級生で、地元にいる時は1番よく遊んでいた友達だ。
彼女とは今年のゴールデンウィークに会ったきりだから、半年以上も顔を合わせていない。


久しぶりだなー、って思いつつ電話に出た。


「もしもーし、さやか?久しぶり!」

『梢、元気〜?』


懐かしいさやかの声に顔をほころばせながら、部屋の電気をつけてバッグをベッドに放り投げる。
ワンルームのこの部屋は住んでから4年経っていて、使い勝手も慣れてしまったので引っ越す気は全然無い。


落ち着いた橙色のカーテンを閉めて、電話の向こうのさやかに声をかけた。


「めちゃくちゃ久しぶりだよね。どうしたの?」

『年末年始ってどうしてる?』

「あぁ、30日の午後に地元に帰るよ。で、年明け2日までいるつもり」


私の実家はここからは遠い。
一応県内なんだけど、車だと1時間半くらいかかっちゃう。
電車でもけっこうな時間を要するし、通勤が大変だからということで一人暮らしを始めたのだ。


『梢ってさ、今付き合ってる人いるの?』


思いもよらない質問で、私の繊細な心にグサッと見えない刃が刺さる。


「い、いないよ〜」


好きな人はいるんだけどね……。
カメ男っていう、世にも不思議な男。


『ちょうどよかった!合コン行かない?』


さやかの明るい誘いに、思わず言葉に詰まる。
合コンなんて言葉、そういえばあったなぁ、っていうそういう気持ち。