須和は透明なガラスのコップに水を汲んできてくれて、ご丁寧に氷まで浮かべて部屋に戻ってきた。
そのコップを無言で私に差し出してくる。
コップをそっと受け取った私は、ヤケ酒でも煽るかのようにグイッと水を一気飲みした。
ゴキュッゴキュッと喉を鳴らして飲み干した私はコップをトン!と部屋の黒いテーブルに置いて、ボーッと突っ立っているでくの坊に人差し指を突き付けた。
「ちょっと!確認させて!」
「うん」
でくの坊がうなずいたのを皮切りに、私はヤツに質問攻めをした。
「昨日の記憶がまったく無いの。どうして私はここにいるの?ここ、須和の家だよね?」
「居酒屋でベロンベロンに酔った大野を、同期という理由で俺が担ぐことになった。タクシー乗せたけど住所も言わずに独り言ばっかり話してるから、仕方なくここに運んだ。で、ここは俺の家」
「は、はい、次。起きた時、私……す、すんごい格好だったけど、須和が脱がせたの?」
「自分で脱いでた。笑いながら。服が邪魔だって。止めたらそのままベッドに潜り込んだ」
「つ……、つ……、つまり、…………み、見たのよね?」
「何を」
「わ、わわ、私の……半裸」
「不可抗力」
きゃああああああああ!!
と叫びたかったけれど、それはさすがに人様の家だしおそらく壁の薄いアパートだろうし、どうにか堪えた。
ブラをつけたままとはいえキャミソール1枚パンツ1枚の姿を、なんとも思ってない彼氏でもない男に見られたなんて、自分史上間違いなくぶっちぎり1位の人生の汚点。
イコール、貧乳もバレてしまったということか。
無念。
「さ、最後にひとつだけ確認させて……」
わなわなと震える体を、アルコールが残るもやっとした頭でコントロールしながら須和を睨んだ。
「私たち……何もしてないよね!?」



