よく見たら入口に私が脱ぎ捨てたスリッパ以外に、2組のスリッパがあった。
それを見て、やっちまった、と頭を抱えた。
これをちゃんと見逃したりしてなければ、中にいるのが奈々だけじゃないって予想出来たはずなのに。
おめでたい私の頭ではそこまで汲み取れなかった。
さっき見てしまった2人のすごい現場。
田嶋が奈々を押し倒して、ものすごいキスをしていたぞ。
ついでに言うなら、下敷きになっている奈々の浴衣は崩れまくってたぞ。
おいおい、今日は社員旅行だぞ〜!
何しに来たんだお前ら〜!!
「大野、ごめん」
突然後ろから田嶋の声が聞こえて、「ぎゃっ!」と飛び跳ねて驚く。
引き戸を開けて、田嶋が気まずそうな顔でこちらを見ていた。
そりゃ気まずいでしょうよ。
見てしまった私はもっと気まずいっつーの。
「お、お取り込み中ごめんなさいね〜」
ほほほ、とわざとらしく笑うと、彼はゴソゴソと浴衣の袂から何かを取り出して私に差し出してきた。
部屋の鍵だった。
ここのじゃなく、違う部屋番号が書いてある。
ほぉほぉ。
なるほど、邪魔者はこっちへ行けってね。
田嶋が泊まる予定の部屋ね。
はいはい、分かりましたよ。
この状況で断れるほど子供じゃありませんから、私。
「分かった。悪いけど、荷物取ってくれる?ボーダーの布地のボストンバッグ」
鍵を受け取りつつそう言うと、田嶋はうなずいてバッグを取りに行ってくれた。
その隙間に見える、部屋の中の様子。
奈々が恥ずかしそうに私に向かって両手を合わせていた。
ごめんね、コズ。
そう言いたいのが分かって、小さく手を振って見せた。
田嶋が持ってきてくれたバッグを抱えて、私はムフフ、とニヤケ顔で
「どうぞごゆっくり〜」
と言って、部屋を出た。



