怒りの炎で充満する心が爆発寸前までいきそうになったとき、名前も知らない男性の方が「そういえばさ」と思いついたように課長に尋ねた。
「落とせなかった女っているのか?」
それを聞いて、怒りの炎が即座に萎む。
落とせなかった女、って私じゃないか!
どうだ!本性を見抜いたいい女でしょうが!
見えもしないのに勝ち誇った顔をしていたら。
課長はしれっとした態度で吐き捨てるように言った。
「1人だけな。よりによって事務課にいる普通レベルの女」
………………悪かったな、普通レベルで。
その普通レベルを落とせなかったんでしょ。
何を偉そうに。
「あぁ、そういや宴会場で席が近いぞ。その女と」
うわ、やっぱり私の存在に気づいてたんだ。
だからやけに目が合ったのね……。
「お前も一回見てみろよ。ほんとに普通すぎて笑えるから。絶対こいつなら余裕で落とせる、って思えるくらい普通の女だからさ」
普通、普通、ってうっさい!
自分でも分かってるっつーの!
「今頃後悔してるかもな。俺に抱かれなかったこと」
だーれーがー後悔なんかしてるもんか!!
1ミリほど持ち合わせていた理性のおかげで、どうにかその場に乗り込んでビンタをかましてやる、という行動には移さなかったけど。
怖いなー、お前ってほんとに。
とかなんとか相手の男も笑いながら煙草をスパスパ吸っているから余計に腹が立つ。
笑うところなんてどこにも無いよ。
あの2人の会話は根本的におかしい。
私はこれ以上この自意識過剰男の話なんて聞くまい、と決めて、さっさと宴会場に戻ることにした。



