「珍しいですね、大野さんが俺のことランチに誘ってくるなんて」
モグモグとデミグラスソースがかかったオムライスを頬張りながら、私の目の前で神田くんが可愛い笑顔を振りまいてくる。
彼に負けじと、それなりに可愛く見えるように私も笑みを浮かべた。
昨日の夜に決意してから、早速次の日の今日。
神田くんをランチに誘って呼び出すことに成功した。
こんなにサックリOKをもらえるなら、さっさと誘えばよかったと今さらながら後悔する。
アサリとルッコラの塩パスタをフォークでくるくる巻きつつ、おそるおそる本題を切り出そうと言いかける。
「か、神田くんてさぁ……」
「あっ、すみません、タバスコ取ってもらえます?」
マイペースな神田くんに横槍を刺されて、仕方なくそばにあったタバスコを彼に渡す。
彼は受け取ったタバスコをものすごい勢いでオムライスにぶっかけていた。
甘い顔に似合わず辛党らしい。
コホン、と咳払いして、もう一度仕切り直す。
「神田くん。ちょっと聞きたいことがあるのよ」
意を決して彼の目を見つめると、神田くんはクリッとした小動物のような二重まぶたの大きな目をパチッと瞬かせ、首をかしげた。
「はい、なんでしょうか?」
「君のね、好きな子の話なのよ……」
「……………………………………え!?」
神田くんの顔が一気に真っ赤に紅潮し、慌てたように辺りをキョロキョロし出した。
会社の人間は誰もいないというのに。
「ちょ、ちょっと!どうして大野さんが東山さんのこと知ってるんですか!?」
彼の慌てように吹き出しそうになったけど、どうにか堪えて「美穂ちゃんに聞いたの」と答える。
神田くんはハァ~、とガックリ肩を落としていた。
「うわぁ~、そうなんですね……。めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど」
「ごめんごめん」
いちいち反応が可愛いな、という姉心的なものを封印しながら彼に聞いてみた。
「美穂ちゃんに好きな人がいるのは知ってるんでしょ?諦める気無いの?」
「…………あー……、もしかして、東山さんに相談されました?俺がウザいとか?」
ピンと来たのか、神田くんは情けない眉尻を下げたような表情をして聞き返してきた。



