ハッとして自分の体を見下ろす。
胸元にビジューのついたキャミソール1枚。
道理で寒いわけだ。
昨日着ていた黒い薄手のニットは、男の向こう側に見える明るいブラウンのフローリングの床にぐっちゃぐちゃのまま脱ぎ捨てられていた。
その隣に、見覚えのあるデニムもぐっちゃぐちゃ。
私が昨日着てた服だ……。
げっ!!
まさか!
布団を剥ぐと、パンツ1枚だった。
キャミソール1枚にパンツ1枚。
ひええええええええ!!
これって、ドラマでよく見るやつ!!
事故が起きたやつ!!
こういうのって実際にあるの!?
貧相なスタイルの私に発情する人なんているの!?
慌てて掛け布団を体に巻き付けて、まじまじと隣で眠る男を見つめた。
黒髪で、くしゃくしゃの毛質。
Tシャツ越しでも分かる、程よく筋肉のついた背中と腕。
顔はここからじゃよく見えないけど、とにかく分かるのは愛しの熊谷課長ではないということ。
なんにも覚えてない。
ひとっつも、僅かにも覚えてない。
最後に真野さんが私を呼んでいたことくらいしか覚えてない。
私はこの男と何をしたんだ……。
ってやることひとつだよね……。
顔面蒼白でベッドの上で座っていると、男がモゾッと動いた。
「ひっ」
思わず声が漏れる。
その小さな悲鳴に、男がゆっくりと眠そうな顔をこちらに向けた。



