ウサギとカメの物語



二度見ってほんとにするんだ、ってこの時思った。


だって見間違いだと信じたかったから。
嘘だと思いたかったから。


━━━━━美穂ちゃんの好きな人って、熊谷課長だったんだ。


隣の奈々でさえ驚きすぎて声も出せていない。
もちろん、私も。


美穂ちゃんは真っ白いコートに身を包んでいて、美脚を惜しげもなく披露するようなミニ丈のスカートを履いていた。
仕事の時に着ていた服とは違う。
おそらく課長とのデートのために着替えたんだ。
わざわざ着替えを持ってきてまで、彼に可愛いところを見せるために。


きっと、本当に本気で課長のことが好きなんだ。


「コズ……。そんなにショック受けないで」


隣から気を遣うような声が聞こえて、私はハッとして奈々を見る。
めちゃくちゃ気まずそうに私を見ていた。


「ショックなんて受けてないって!ほんとに!課長への気持ちは単なる憧れだから好きとかそういうのじゃないし!」

「え~……今夜飲みに行こう?」

「ほんとに違うからやめて!」


やいのやいの会話をしながら、私は別なところでショックを受けていた。


美穂ちゃん……、あなたロクデナシを好きになっちゃったのね、って。
課長の2番目になってしまった彼女。
美穂ちゃんの話では課長には恋人がいるということ。
本当かどうかは分からないけど、どっちにしたって課長からしてみたら美穂ちゃんとは本気の恋じゃない。


分かるよ、気持ちは。
課長は表面上は本当にかっこいいし、仕事も出来るし、爽やかだし、大人だし。
でも美穂ちゃんは疲れないのかな、自分を着飾って背伸びして。
私はダメだったけど、彼女は平気なのかな。


全部人それぞれの感情だから、正解なんて無いんだけど。