その日の夜、定時で仕事を終えた私は、奈々に誘われて買い物に付き合っていた。
彼女が買いたいもの……それはまさかの勝負下着だった。
「なんに使うの、勝負下着なんてさ」
アーケード街に入っている有名な下着メーカーのお店。
来月のクリスマスに向けて可愛い下着を買い揃えよう、みたいなコンセプトで店内は可愛らしい下着が所せましと並んでいた。
私の呆れ顔を見て奈々が不満そうに口を尖らせる。
「勝負下着なんだから勝負する時しか使わないでしょ!」
「ほぉ~。奈々さん、勝負するの?いつよ?」
「……クリスマス」
「ちょっとちょっと~、世間に流されてるんじゃないのぉ~」
あははは、と笑い飛ばす私をよそに、奈々は真剣な表情で店内を歩き回っている。
彼女の勝負したい相手が田嶋だっていうのはもはや暗黙の了解っていうか、分かり切ったことではあるんだけど。
3年かかっても気持ちを伝えられないのに、それをすっ飛ばして勝負下着を買うのはいかがなものかと。
可愛いブラとショーツのセットを横目に、そういえば、と思う。
もう1年以上、新しい下着なんて買っていないことに気づいた。
ヤバい。
女としてヤバいよね?
でも買い替えのタイミングっていうのが分からないんだもの。
それに、見せる相手もいない。
ヨレヨレのパンツを履いてようが、レースに穴があいたブラをつけていようが、私には関係ないのだ。
指先でつまむように下着を眺めていると、私の隣にいつの間にか奈々がいた。
「コズも買ったら?好きな人いるんでしょ?デートしてる相手。いつそうなってもいいようにさ」
ニヤニヤと笑ってからかってくる奈々を見ないようにしながら、曖昧な返事をする。
「いやー……。もう必要ないかなぁ」
「なんでよ?……あー、もしかしてすでにヤッちゃっ……」
「ヤってません」
なんだぁ、つまんない。
っていうつぶやきと共に、再び奈々が私のそばを離れて下着を見て回る。



