ウサギとカメの物語



━━━━━目を開けた。


と同時に激しい頭痛。
ズキズキズキッと頭が割れるように痛んで、開きかけた目をまたすぐにつぶった。


「……いったぁ……」


さすがに昨夜は飲みすぎちゃったか……。
だって熊谷課長があんな事言うから。
舞い上がってお酒のペースもぐんぐん上がっちゃって、自分では制御不能になっちゃったんだもん。


あ、ヤバ……。
化粧を落とした記憶が無い。
ということは、今の私のお肌の状態は最悪だよね。


ん?というか……、自分のアパートに帰宅した記憶が無い。


ついでに言うなら、昨日の飲み会の記憶が途中で途切れている。


パチッと目を開いて、壁に向かって寝ていた体を仰向けにした。


━━━━━ここ、どこよ。


さっきまで痛んでいたはずの頭痛はどこへやら、目だけを動かして部屋を見回した。


知らない天井、知らない本棚、知らないオーディオ、知らないテーブル、知らないテレビ、知らないクローゼット、知らない窓とカーテン、知らないポスター、知らない観葉植物、知らない掛け布団、知らないベッド。


えっ!?


ガバッと体を起こした。


隣に………………知らない男。


私に背中を向けて、ヨレヨレのグレーのTシャツを着てスースー寝息を立てて寝ている。


サーッと血の気が引いた。